notes by crossroads


Kenichi Wakabayashi
crossroads inc. CEO
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マインクラフトで得られる学びとは?

「マインクラフトを教育にどう活かせるのか?」という問いをいただきました。せっかくなので、私なりに考えていることをまとめてみます。

教育ではなく学び

まず押さえておきたいのは「教育」という言葉についてです。「教育」というと、大人が子どもに与えるものというイメージが強いですよね。でも、マインクラフトで得られるのはもっと自発的で、自分から生まれる“学び”。だからここでは「教育」ではなく「学び」という言葉を使いたいと思います。

ストーリーをつくる

マインクラフトといえば、建物や街を作ることを思い浮かべる人が多いでしょう。子どもたちが何かを作るとき、そこには必ずストーリーがあります。

私の運営するCoderDojoでは、マインクラフトで夏祭り会場を作った子がいました。射的、ガチャ、花火、そしてなぜか牛の乳搾り体験コーナーまで。大人から見ると「夏祭りに乳搾りはないよね」と思うかもしれませんが、その子にとっては欠かせない要素であり、彼なりのストーリーがあったのです。

大事なのは、それが正しいかどうかを議論することではなく、「なぜそうしたのか」「どんな意味があるのか」を知ることであり、それを通して子どもたちが考えた世界を見ることができます。

ストーリーの表現方法は文章や動画、音楽、イラストなどさまざま。その中で、マインクラフトならではの“見える化”があります。自分の考えを形にすることで新しいアイデアが生まれ、その繰り返しが創造性を育てる、マインクラフトで子どもたちが得る学びのひとつだと思います。

ルールをつくる

私が子どものころの遊びには、自然と「ルールをつくる」場面がありました。放課後に公園で野球をしても人数が少なく、塁にいる子にまた打順が回ることがよくありました。そこで登場するのが「透明ランナー」というルール。塁上に“見えない走者”がいることにして、ヒットが出れば進塁させる。ゲッツーのときはその場で判断する。そんな風に遊びの中で柔軟にルールを作っていたのです。

こうしたローカルルールは、その場の子どもたちが工夫して生まれたもの。ところがデジタルの遊びでは、ルールはあらかじめ機械やアプリに組み込まれていて、自分たちで決める余地が少なくなっています。

ルールづくりにはたくさんの学びが詰まっています。

つまり「企画して、論理的に整え、みんなで話し合う(コミュニケーション)」ことを遊びの中で自然に身につけられるのです。

マインクラフトの自由な世界では、子どもたちが自分たちでルールを考え、作り出すことができます。大人が決め与えるのではなく、子どもたち自身が創り上げる。 それがもうひとつのマインクラフトで得られる学びだと思います。

プロジェクトをやりきる

マインクラフトの世界で「これを作りたい!」と思ったら、子どもたちは調べたり工夫したりして形にしていきます。たとえばガチャを作るなら、「どういう仕組みにする?」「やった人が楽しいと思うには?」と考えることがたくさんあります。

学校の勉強みたいに、テストで100点取れるとか成果がすぐに見えるわけじゃないけど、やりきる過程でたくさん学べます。そしてその経験は次の挑戦につながる。これがすごく大事なポイントだと思います。

学校の勉強のように「教科書に沿って学ぶ」わけではないので、たとえば算数の九九のように成果がすぐに見えることは少ないかもしれません。けれども、自分のプロジェクトをやりきる過程でたくさんの学びがあり、その経験は次の新しい挑戦へとつながっていき、また新しいことを学ぶ。この繰り返しが子どもたちの成長を大きく後押しします。

プロジェクトを進めてやりきるって、言い換えると「小さな決断の積み重ね」なんです。決める経験を重ねることは、生きる力になります。マインクラフトはその練習の場になるんです。

プロジェクトを進めてやりきるって、言い換えると「小さな決断の積み重ね」なんです。決めるって意外と難しい、大人でもできていないシーンを見かけます。でも、子どもの頃から決める経験を重ねていけば、大人になってからも決めるを続けられる人になる。

マインクラフトは、そのためのプラットフォームになると考えています。

大人はどう関わればよいか?

では、大人はどう関わればいいか。答えはシンプルで、「一緒に楽しむこと」だと思います。

大人もプレイヤーとして参加して、子どもが見ている世界を一緒に体験する。そのストーリーに入り込むと、子どもが何を大事にしているか本当に分かってきます。一緒に考えて、一緒に学ぶ。そうすると大人にとっても新しい発見があるんですよね。

「大人は子どもに何かを与えなきゃ」という思い込みから解放されて、子どもと並んで学びを楽しむ。

これが子どもも大人も、マインクラフトを通じて得られる一番の学びじゃないかなと思います。