DXとは人とシステムの境目をデザインすること
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デジタル化がうまくいくかどうかは、どこまでを人がやって、どこからをシステムに任せるかの線引きで決まるという話。
「DX(デジタルトランスフォーメーション。デジタルを使って仕事のやり方そのものを変えること)」という言葉も、すっかり定着しました。
でも、言葉だけが先行して「結局のところ、何から手を付ければいいの?」と戸惑っている方も多いのではないでしょうか。一般的にDXは「デジタルの活用によって業務を変革すること」と説明されます。けれど、みんなが知りたいのは定義ではなく、「具体的にどうやって業務を変えるのか」という方法のほうですよね。
私がこれを考えるときにいちばん大事にしているのは、「人とシステムの境目をデザインする」という視点です。
人がやること、システムに任せること
「境目をデザインする」と言っても、難しく考える必要はありません。まずは人間とシステムの役割分担を整理することから始めます。
システムを入れるとき、多くの担当者は「とにかく人間の作業を減らしたい」と考えます。もちろんそれは正解なのですが、落とし穴があって、それが「例外」の存在です。
業務の流れを考えるとき、どうしても「すべて予定通りに進んだ場合」だけを見てシステムを作ってしまいがち。でも、現実の業務には例外がつきものです。「書類に不備があったら?」「書類が期日までに回ってこなかったら?」といったイレギュラーを無視して組んでしまうと、いざ例外が起きたときの対応が非常に難しくなります。
- 理想:全部システムで自動化したい
- 現実:まれに起こる例外のために、かえって手間が増える
例外への対応をシステムに組み込むのはコストがかかるので、避けたい気持ちはよくわかります。でも、業務内容が変わって「まれな例外」がいつも起こる例外になってしまい、システムのほうが足かせになる。これでは本末転倒です。
長く使えるシステムを作るコツは、「あえてシステム化せず、人間が対応する例外」を最初から計算に入れておくことなのだと思います。
人とシステムが触れる回数を減らす
もう一つの視点は、人とシステムが触れる回数、つまり接点を減らすことです。
よくある失敗が、「特定の業務に特化した小さなシステム」を次々と導入してしまって、道具が乱立するケース。
- Aの業務は「〇〇ツール」に入力
- Bの業務は「△△ソフト」で管理
- その間のデータの移し替えは人間がコピー&ペースト
こうなると、バラバラのシステム同士をつなぐために、人間が接着剤のような役割を強いられることになります。デジタル化で楽になるどころか、複数のシステムを行ったり来たりする負担で疲れてしまう。
システムを入れるときは、「これを入れることで、人間とシステムの接点が増えすぎないか」を常に意識する必要があるなと思っています。
「それ、デジタル化しないほうがいいですよ」と言って怒られた話
会社員時代に、こんなことがありました。
庶務の方から「紙の決裁書をデジタル化して検索しやすくしたい」と相談を受けたときのことです。詳しく話を聞くと、デジタル化したとしても原本(紙)の保存は必須。しかも紙の管理ルールもしっかりしていて、現状でも検索に困っている様子はありませんでした。
そこで私は正直にこう伝えました。
「それならデジタル化しないほうがいいですよ。スキャンする手間という『新しい仕事』が増えるだけですから」
……結果、それまで仲良くしていたその方に、口をきいてもらえなくなりました(苦笑)。ご本人にとっては、デジタル化すること自体に価値があったのかもしれません。
とはいえ、どれだけ嫌われたとしても、「仕事が増えるだけのデジタル化」に手を貸すことは、やっぱりできないんですよね。
線を引くのが仕事
デジタル化の目的は、あくまで業務を楽に、効率的にすることです。
どこまでを人が行い、どこからをシステムに任せるか。この線の引き方を見極めることこそが、システム屋のいちばん重要な仕事なんじゃないかなと考えています。
デジタルを入れたのに、なんだか仕事がややこしくなった。そう感じているとしたら、たぶん線の引き場所を間違えているのではないかなと。